「いほり」(旧仮名遣い)は、『いおり』と発音します。同じ発音の文字としては、「庵」という漢字もあり、粗末な小さな家という意味も同じです(※①)。知人の指摘によると、「廬」は、いえを表す『广』と『盧』を合わせた文字になっていて、『盧』は、まるいつぼ型の飯器の意味がある、ということです(※②参照)。知人は更に、「慮」という字に言及して、「『思慮』(おもいやり)にも通ずるのでしょうね」とおっしゃっていました。「慮」は、『心+廬』の略字だそうです。私自身は、そこまで思いが至っておりませんでした。
開店して1ヶ月程経った頃、台湾の方が来店されたことがありました。漢字が読めますので尋ねたところ、私が「廬」という店名に込めた意味をほぼ正確に理解していらっしゃったので嬉しくなりました。
※①
『古典基礎語辞典』 大野晋(編) 角川学芸出版
いほり(廬・庵):
【解説】イホ(廬)イリ(入り)の転か。このイホはイヘ(家)・イワ(岩)などと同根。農事・旅先・弔いなどにおいて、草や木で作った粗末な仮の家にとどまること。また、その仮屋。仮屋の意味ではイホという語形でも用いられ、『和名抄』に「廬 毛詩云ハク農人廬ヲ作リ以テ田事ニ便ズ・・・・・・和名、伊保イホ」とある。
類義語ヤドリ(宿り)は旅先で他の人の家に一時泊まること。動詞形イホルもあるが、『万葉集』では多くイホリスの形で用いられている。中古以降は粗末な仮住居の意味が中心。
【語釈】
①仮小屋にとどまること。
ア 農事や旅先などで、仮小屋にとどまること。
イ 軍隊の宿営。
②粗末な仮小屋。
ア 農事・旅先などで使う仮小屋。
イ 隠者などの粗末な住居。草庵。
※②
『学研 新漢和大字典』
藤堂明保・加納喜光(編) 学習研究社
【廬】
(意味)
①《名》いおり(いほり)
まるいつぼ型の小屋。転じて、粗末な小さい家。[類]庵(アン)
②《名》いえ(いへ)
農村の質素ないえ。
③《動》いおりをつくる。また、いおりをつくって住む。
(解字)
盧(ロ)は、まるい筒型のつぼのことで、壺盧(コロ)ともいう。
廬(ロ)は「广(いえ)+音符 盧」の会意兼形声文字で、まるいつぼ型の小屋。