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包丁のこと(その5)

今回は、包丁の研ぎについてのイメージを書こうと思います。

包丁を研ぐとは、どういうことか?

包丁は使っていく内に、下の図のように刃先が摩耗して切れ味が落ちていきます。

図1:包丁の刃先

下の図に示したように、摩耗した刃先を、もう一度鋭角の刃先になるように研ぐことにより、切れ味を元のように戻すことができます。

図2:研いだ後の刃先

砥石で研いでいくと、摩耗した刃先が鋭角になり、”かえり”と呼ばれる鋼の出っ張りが出ます。裏刃を研いで、”かえり”を取り去れば、再び切れるようになります。但し、包丁の研ぎは、摩耗した刃先の部分だけを研げば終わりではありません。下の図で示したように、切れ味の落ちる部分は、通常は刃先の一部分に過ぎません。

図3:切れ味の落ちた部分

もし、切れ味の落ちた部分のみを研ぎ続ければ、包丁の形が変形して下図のように”鶴首”になってしまいます。ピーリングナイフ等、特殊な包丁の場合を除いて、通常は”鶴首”にならないように元の形を保持して研ぐことが基本です。

図4:悪い研ぎ方の例(”鶴首”)

ユークリッド幾何学によれば、平面と平面の交差する部分は直線になります。(下図参照)

図5:平面の交差

砥石の表面が平面であるとすると、表の切刃の部分と裏刃をそれぞれ砥石にピッタリつけて研ぐと下図に示すように刃先は直線になる筈です。この研ぎ方を”ベタ研ぎ”と言います。

図6:ベタ研ぎの例

私が知っているプロの料理人の中には、”ベタ研ぎ”をする人もいました。この研ぎ方が絶対にダメということはありませんけれど、基本的には最初の形を崩さない、というのが基本だと思います。イメージとしては、下図のようなものです。

図7:研いだ後の形状

研ぐと言うことは、図3に示した摩耗して切れ味の落ちた部分の刃先を再び鋭角に研ぐと同時に、刃元から切先に至るそれ以外の部分も研いで、全体の形を保持することです。
面直しをした平面の砥石を使って、図6の様な”ベタ研ぎ”にならないように研ぐには、どうするかについては、次回に説明することにします。