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栄養について(その2)

栄養とは

毎日の食事の献立を考えるのはなかなか大変なことです。ある時期に、栄養学の本を数冊読んでみたのですが、現在の栄養学の守備範囲では不充分だ、と最近思うようになりました。栄養というのは、体の中に取り込まれるものです。栄養素は、たんぱく質、脂質、炭水化物、無機質、ビタミンの5種類に分けられ、これを「五大栄養素」と言います。一方「食物繊維」は炭水化物の一部ですが、体内に吸収されるものではないので栄養素とは言わないことがあります。最近は、第6の栄養素という場合もありますが、すこし前の栄養学の本では、「食物繊維」については非常に簡単に触れられていることが多かったように思います。

体の中と外

人間の体は、最も単純に考えればドーナツと同じような構造だと言えます。鼻の穴などがなく、口と肛門のみを考えた場合です。数学にトポロジー(Topology、位相数学)という一分野があり、連続的に変形した場合、ドーナツ、ちくわ、コーヒーカップ等は、トポロジー的に同じものに属します。ドーナツやちくわの食べる部分を内部とすると、その穴(空洞部分)は、外部と言うことになります。
「からだの中の外界 腸の不思議」(上野川修一著 講談社)p.4 に次の様な記述があります。
『(腸は)「実は体外である」ということだ。消化管は、文字どおり「中空のパイプ」である。ちくわを思い浮かべていただければよくわかるように、腸は「内側を向いた体表」であり、おなかの中に広がる”外界”なのである。
その、「内なる外」で暮らしているのが腸内細菌だ。独自の遺伝子をもち、1000種類、100兆個にも及ぶこの共生者たちは、「第二のゲノム」と呼ぶにふさわしいさまざまな働きをしてくれている。”格納庫”である腸と互いに助けあう腸内細菌への関心は、一般の人たちのあいだで日に日に高まっている。』
また、2016年7月21日付朝日新聞のコラム『福岡伸一の動的平衡:34 人間は考える「管」』に次の様な記述が有ります。
『人間は考える葦(あし)である。そうパスカルはいったそうだが、私が見るところ、人間は考える管(くだ)である。ヒトの身体はとどのつまりちくわのようなもの。口と肛門(こうもん)で外界とつながった一本のチューブだ。だから消化管壁は内部に折りたたまれた皮膚の延長で、肌荒れ同様、消耗が激しい。そして、おなかの中とはいうものの、消化管内は、まだ身体の外部である。ここを通り過ぎる食物が、ちくわの身の中に吸収されて初めて、栄養素が体内に入ったことになる。』
おなかの中、即ち胃や腸の中は身体の外なのです。食物繊維は、ちくわの身の中、即ち人の身体の中には吸収されませんが、腸の中では重要な働きをします。旧来の栄養学の範疇には入らないかも知れませんが、食物繊維は日常の食事を考えた場合、どうしても考慮しないといけません。

食物繊維も含めた理想的な食事とは?

『腸内フローラ』という言葉を耳にする機会が多くなりました。腸の中で起きていることが徐々に判明しつつあるようです。栄養学や予防医学は、日々の食生活を考える上での基本となる考え方を提供してくれるものです。私自身も、”准高齢者”の仲間入りをする者ですので、健康に関して気になる年代になりました。色々情報を集めているのですが、十分納得できるものが少ないというのが実感です。食物繊維等も含めて毎日の食事を考える上で参考になる情報として、研究者の方々には栄養学、医学の守備範疇を広げて頂けると大変有り難いですね。
健康情報に左右され過ぎるのは問題かも知れないのですが、とりあえずは野菜などを十分意識して食べるように心がけたいと思っています。